拒否反応

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拒否反応

翌日の昼休み、私は今日も図書室に向かった。中に入ると、いつもと同じ場所に戸崎くんがいる。その姿を見てなぜだかほっとした私は、また同じ本を棚から抜き、彼の斜め前に腰を下ろした。 「どうも」 「……どーも」 声をかけると、腕組みしてうつむいていた顔を上げ、うなずく戸崎くん。今日は原稿を持っていないようだった。目を何度も瞬かせているところを見ると、居眠りをしていたようだ。この前もうたたねしていたし、寝るために図書室に来ているのではないかとも思う。 「今日は……ないの? 原稿」 「ないよ」 そっけなく言われてしまい、ちょっとがっかりする。また彼の小説を読めるのではないかと、少しだけ期待していたのだ。あの、水曜日のラジオを楽しみにしているように。 「読みたかったの?」 「うん」 素直にそう返すと、彼はふんわり微笑んだ。その顔を見て、私の心がわずかに跳ねる。 「好きなんだね、小説が」 「うん。とくに短編小説が好き。構成がしっかりしてて、心に残る話が」 「へぇ。まぁ、たしかにね。そのほうが技量がいるかもしれない」 戸崎くんが楽しそうに目を細めたのが、前髪の下からでもわかった。それを見て、私はもっと話がしたいと思う。彼がどんなことを思って小説を書いているのか、普段どんな小説を読むのか。 「あの……戸崎くんってラジオとか聴く?」 「え?」 「水曜日の九時からね、一般が応募した短編小説の朗読があるんだけど、知らない?」 いつも表情をたいして変えない戸崎くんが、一瞬目を大きく開けた。
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