異説・酒呑童子 誕生秘話

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        -酒呑童子(しゅてんどうじ)-  大江山鬼族(きぞく)首魁にして、赤ら顔と巨躯を持つ、平安最強最悪の鬼と言われ、悪行の限りを尽くした、と伝えられる。  その素性については諸説あり、『八俣大蛇の子』などとも言われている。  しかし、その酒呑童子が『元人間』と言う説話はあまり知られていない。 -昔々。ある山寺に『外道丸』と言う稚児がいた。外道丸は大層美しく、数多の女性(にょしょう)が熱を上げ、恋い焦がれた。  しかし。外道丸はそれらの女性を冷たくあしらい、女性達はいたく哀しみ、自ら命を絶つ者さえいた。  それすら気にも止めず。ある日、外道丸は女性達から送られた恋文を、全て焼き捨てようとした。  その時、恋文を焼いた煙が外道丸の躰を包み込み、その身を見るも恐ろしい『鬼』に変えた。  女性達の『妄執』がそうさせたのか。それとも、元々外道丸が持っていた『鬼の如き心』が目醒めた故か。  鬼へと変じた外道丸は姿を消し、その行方は杳として知れぬ………。酒呑童子の正体はその外道丸だ、と言う説話である。
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