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それ故に、滅ぼしてしまうのは忍びなかったのだ。京で懸命に日々を生きている善良な民もいよう。
そんな民達には、何の罪咎もないのだから。そんな善良で無力な民達こそが愛おしかった。
搾取する側である貴族達には、救いようのない者も多いが、それが全てでもない。同じように、無力な民達を護ろうとする者も、一握り存在したのだ。
頼光等も、またそうした者達であったのだろう。帝に仕えていても、心まで捧げているわけではない。
実際に、頼光は今回の『大江山鬼族討伐』に、何やら思うところがあるらしかった。
元より、頼光は望んで『鬼狩り将軍』になったわけではなかった。無論、武功を立てたいと思わなかったと言えば嘘になる。
けれど。頼光が鬼や妖しに対し、刀を取ったのは人々を護るためだ。身を護るための兵も、力も持たぬ無力な民を護るため、刀を取ったのだ。
頼光は源氏の武士なのだから。武士の力は、刀は護るべき者の為にあると信じているから。
無論、頼光や四天王達がそうだったからと言っても、他の武士達もそう考えているか、と問うたならば………答えは『否』であろう。
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