その頃の茨木~平安京にて~

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 鬼討伐や妖退治を〝力なき民を護るため〟ではなく、〝己の立身出世の為の手段〟と考える者もいる。  そういった者に限って、その戦力(ちから)は本物の鬼にとっては、程度であることが多い。  まぁ。頼光や四天王ほどの武勇を誇る者が、そうそういるわけがないのが道理だが。そもそも、唯人(ただびと)が数々の異能を持つ鬼に敵うはずがない。  人より遥かに永い寿命、頑強な肉体と自己治癒力。強靭な精神力と妖力。その妖力による多種多様な術。   -そして、この世のものとは思えぬ美貌-  他の大江山鬼族はさておき。朱天の場合は堕ちたりとは言え、母が天女であったが故、厳密に言えば『この世のもの』ではない。  その上、父は持って産まれた類い稀な美貌が災いし、鬼に堕ちた男である。その二人から産まれた朱天が『この世のものとは思えぬ美貌』を持っていたとて不思議はない。  寧ろ、当然のことと言えよう。とは言え、その上、朱天に次ぐ美貌と妖力の持ち主が、何故か半鬼たる茨木であるのだが………。  もしも………朱天と茨木が結ばれ、子を成したならば、史上最高最強の真の鬼の頭目に相応しい子が産まれただろうに………。
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