その頃の茨木~平安京にて~

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 惜しむらくは、肝心の朱天本人にが全くないことだろうか。恋も知らぬ朱天には、己が子を産む想像すら出来ない。  一族(血の繋がりはない)を率い導く首魁の座に就く者として、次代を担う子を成す必要はあるのだろうが、それが必須と言うわけでもない。  そもそも、首魁の座に血統は関係なく、世襲性でもない。首魁の座に必要なのは、相応しい器と最高位の妖力。  次代の首魁の座を継ぐのは茨木でもいいし、四天王の誰かでもいい(※四天王の首魁の最有力候補は星熊ではなく、金童子)。 -ただ、その条件を満たす者が、当代では奇  しくも〝朱天だった〟と言うだけである-  それ故、次代が〝朱天の子〟でなくてはならぬ理由はないのだ。今現在のままで言えば、次代を継ぐのは茨木であろう。  朱天に次ぐ美貌と妖力。但し、器不足が否めぬので、金童子が次代に就く可能性もある。  茨木には一歩劣るが、金童子の妖力は決して低くはなく、器は充分と言える。そして、金童子には『恋仲の人間(ひめ)』がいない。  恋に溺れ、盲目となるような愚鈍(おろか)(もの)はおらぬが、懸念はない方がよい。  首魁に相応しい妖力か、首魁に相応しい器か。その判断も次代を継ぐ、若き鬼達に任せよう。  茨木か金童子か。どちらが継ぐにせよ、まで自分は生きてはおらぬだろう、と朱天は思う。
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