ことの始まり

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

ことの始まり

僕は暇だった。 暇すぎて暇が余っていた。 観たかった映画も、読みたかった本も漫画も、聴きたかったCDも、終わらせたかったRPGのゲームも。全部、全部、尽きてしまった。 面白くなかったわけじゃない。でも、一通り終わってしまうと、「さあ、2回目だ」とまではやりこもうと思えない。できれば次の新しいものが欲しい。 僕はホラー風味が好きだった。 「風味」というのは、もうコッテコテのドッロドロに恐怖のどん底へ叩き落とされるようなホラーよりも、これやらせか?編集か?というくらいのわざとらしさが多少ある、所謂B級ホラーの方が僕にとっては好ましかった。 しかし、この好みの線引きは微妙である。当たりハズレがあるのだ。だからなかなか「これだ!」というものに出会えない。 ホラーというジャンルを抜きにしても、いつだって僕の好みのど真ん中をいく作品は本当に少なかった。 そんなときだった。 僕は、Twitterで変なものを見つけた。 アカウントの名前は「ホラー動画を探し隊」。 ホラー動画が好きな僕としては気になる名前だった。 早速フォローしてみると、プロフィールに書かれていたのは「ホラー動画を探したいメンバーその1山田」。 どうやら全部で4人いるらしい。 というか、名前そのまんま(笑) メンバーは山田の他に佐藤、田中、鈴木がいる。 おい、名前(笑) 僕は確信した。これ、絶対本名だろ。って。 内容は簡単。その名の通り面白いホラー動画を探してツイートに載せる。 ちゃんと引用元も出てて、なかなか面白い。 何より4人の性格・好みがはっきり出てて、更にコメントが笑える。 とりあえず4人全員フォローをして、更新を楽しみにしてた。 国内はもちろん、海外の動画も紹介してしっかり説明も加えてくれる。 一本の動画自体はそれほど長いものじゃないから、空いた時間にさらっと見ることができた。 更新の間隔も3日に1回位。 彼らは僕のオススメユーザーになっていた。 彼らは本当に趣味でやっているらしくて、動画サイトや掲示板みたいなところには投稿していないらしかった。 本当にこのTwitterだけ。 あ、あとたまにYouTube。 職業は一応ユーチューバーとなっていた。 ユーチューバーじゃなかったら、ただのツイッタラーだ。 リプライをすれば全部じゃないけど返信もしてくれて、「どういう動画見てみたい?」って向こうから聞いてくれてたりもしてた。 ある日、彼らはこういう内容を載せた。 「自分たちで動画作ってみることにした! 楽しみにしてて!!」 それが載ってから、もう3ヶ月が経った。 僕は心配になってて、ある時急に更新されたそれを見たとき、とうとうやっちゃったなって思ったんだ。 いつか、彼らはやるかもしれないと思っていた。 僕は、そのツイートを笑いながら開いた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!