序章 追われる少年

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颯は 樹上より 武田の武者達を監視していると 一人の僧侶が その武者達の前に突如現れては「傀儡の術 お前ら面倒だ お互いに切りあってしまえ」と 言うや 正気を失った 彼ら いきなり抜刀しては 皆 切りあいをはじめてしまいます 「うむ やはり操られていたのか だがしかし あの僧は何者だ? 何故 武田の武者を操ってまで 我らを追っ払ったのだ?」 颯はさらに その僧を 探ろうとするものの  相手は すぐに その場から 風のように消えてしまいました その頃 荒れ寺にて 颯の到着を待つ 二人 御堂 甚一郎と息子 御堂 護 「父上 シンゲン公に何かあったのでしょうか?」 「うむ そうじゃな お前の力を必要としなくなったとも考えられるが それならば わしらをそのまま帰すのもおかしい シンゲン公が亡くなったとしたら 絶対にどこにも漏れないようにするはず わしらを消しにかかってもおかしくない これは厄介なことに巻き込まれたかも知れぬな 早く 里へ戻ろう」 そこへ 数名の何者かが 荒れ寺の周囲に集まって来ているのを感じた 二人 「どうやら 追っ手がかかったようだが どうも様子がおかしい さっきの武者達ではない もっと嫌な空気を纏った連中だ 護 屋根裏へ そこから すぐに猿公の術で 脱出せよ 」 「父上は?」 「こいつらを捉えて 正体を暴いてやる それとすぐに 颯もやって来るしな 一足先に お前だけ 進め」 「わかりました では」と この護少年も 忍びの者なのか? いきなり音もなく跳躍しては 荒れ寺の屋根裏へ そして すぐに 外へ飛び出せる準備をすでにしています 荒れ寺の入り口に手をかけて来たのは 杉の樹上より 窺っていた あの僧侶です 「中におるのはわかっておるは 抵抗せずにすぐに出て参れ 印西の忍びの者よ」と声をかけながらも油断せず 入り口には姿を表しません 逆に いきなり 跳躍しては 派手に 炎の塊を周囲に撃ち込んだのは 御堂 甚一郎「忍法炎光弾」と言うや 周囲が眩しくなるほどの光量で 相手の目を眩ませる技のようです ささささーっと 荒れ寺より 離れた連中  皆 墨染め衣を着た僧侶達が数名 先頭にいた 僧侶「ふん そのような目眩まし 我らには通用せぬぞ」 そして もう一人 近くにいた 背の低い僧侶が低い声で「忍法黒縄地獄 逃がしはせぬぞぉ」と言うや 真っ黒な縄を 御堂 甚一郎ヘと するするするーーーーとまるで生きた蛇の様な動きを見せる 縄術で 捉えようとして来るのを 逆に その縄に逆らわず 御堂氏 忍び刀を抜いては 「忍法飛燕」と一気に加速して 黒縄を操る僧侶の胸板を 突き刺しては 打ち倒しました 「おお 黒縄坊よ しっかりせいや」とすぐそばのもう一人 の僧侶が言うのを聞いて 「貴様ら 根黒寺の忍法僧かぁ 何故我らを狙う?」と 忍び刀ですぐに切りかかれる状況で 訊けば 「知れたことよ 無間の眸 武田などに使わせる訳にはまいらぬゆえな いやいや そんな説明も要らぬか すぐに亡くなるお前さんにはな」 「何を言うか この私を殺ると言うのか そうは簡単には殺られる気はないがな 忍法飛燕」と再び 加速して その僧侶に斬りかかろうとした瞬間 おお なんたることだ 真っ黒な縄が数本 御堂 甚一郎の手足を一気に縛りあげては 「馬鹿なそいつは今倒したではないかぁ 」 そうです 先程 刀で貫いた背の低い僧侶が 何事もなかったように あの黒縄地獄で 御堂 甚一郎の自由を奪ったのです 「我が縄はな 女の生気を纏わせていてな 刀での傷などすぐに塞いでしまうのじゃよ あはは 無間の眸ほどの効力はないがな ふははは」 自由を奪われた 御堂氏 しかし 今度は 口から何かを吐き出して「忍法火柱ぁ」と おお いきなり巨大な 炎の柱を出現させて そこへ自身の体を突っ込んで 黒縄を燃やそうとしています が 御堂氏の抵抗はここまでとなりました 「忍法千本針」 もう一人いた 僧侶がいきなりそう叫ぶや どこから出現したのか まさに千本はあろうかと言う 無数の針が  御堂氏を襲い 全身に無数の針を浴びては 一瞬にして絶命してしまいました 戦闘には加わらなかった 数名の忍法僧達は 「早くあの小僧を探せ 捕まえろ」とばかりに  皆 散って行きました ああ なんたることだ  たった一人で逃走することになってしまった少年 颯よ すぐに彼の元へと戻ってやって来れ
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