序章 追われる少年

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藪を漕いで たどり着いた 先は 草原 かなり先まで続いています そして どうやら その先には 狭羽湖の水が 見えかくれしています 「狭羽湖ですかねえ あそこまでたどり着けば 船でって言う手もあるね」 「いや護様 そう簡単にはまいりません 渡しに船でやつらに襲われては 逃げ場もありませんし」 「颯は 慎重派と言うか まずはこの草原どうします? また藪を漕いで 遠回りしますか?」 「致し方ないです では進みますが 急がず そよ風で草が動く程度の歩みで行きます」 と 一歩踏み出そうとした その時でした プシューーーーーー 真っ黒な縄が 颯に襲いかかってきました そうです 黒縄坊が 彼らを発見したのです 「護様 先に 飛燕で一気に駆け抜けてください 」と 首に巻き付く縄を忍び刀で切断しようとしながら 黒縄坊には聞こえぬ声で伝えるや 「ふふん 我が黒縄 刀等では切れぬは 女の黒髪は象をも繋ぐと云うくらいじゃからのぉ さて あの坊主は何処じゃ?」 と やはり 彼には 一瞬早く 草原へ飛び出した 御堂 護少年は 見つからなかったようで しかも 護少年にとって幸いしたのは ちょうど 湖に向けて 強い突風が吹いていたため 飛燕を使い草原を駆け抜ける姿がわかりずらかったのです 「ほらほら 早く答えねば 首が切れてしまうぞ 」と言う黒縄坊に対して 逆にしらばっくれて 颯「苦しいです あのお坊さん 私がいったい何をしたというのですか? その坊主とは お坊さんのお仲間か何かなんですか?」と言えば 「貴様 印西の忍びであろうが とぼけるなーーーーー!」 「私は山の民 山窩です 苦しい 助けてください」 「見え透いた嘘を申すな その刀 両刃の山刀ウメガイではないではないか?」 「山窩にも色々使うものおります ああ苦しい あなたは僧侶の癖に何故このような無体なことをするのです? ああ 仲間へ 我が同胞を今呼びます 」と 何か懐から笛を取り出す 颯 「おい 貴様 本当に山窩なのか?」と黒縄を少し弛める 黒縄坊 「だから始めから言ってるではありませんか? 私達 山の民の結束力 侮らない方がよいですよ」と言われた瞬間 面倒に成ったのか 黒縄坊 縄をほどいて 「けぇ 我らはこの辺りで 山賊行為を行ってるものを退治しているため このような姿をしているのじゃ」と言っては 縄をほどかれて 一息ついた 颯が そこを立ち去ろうとした瞬間 「邪魔物は消すだけだ」と 再び 黒縄が今度は 胴体めがけて 投げ掛けられます が ここで 颯 失敗を犯してしまいました 黒縄を投げ掛けられる瞬間的に 跳躍して黒縄坊へと刀で反撃に出ては 一閃 黒縄坊の腕を切り裂き また 胸へ突きをいれて 絶命させました。 「ふーっ 恐ろしい縄を使うやつだった すぐに護様のもとへ急がねば」と 風がまだ 湖に向けて吹いてるのを幸いに 颯もまた 忍法飛燕を使い 一気に草原を抜けて行きました 倒した黒縄坊 忍びの習慣として 絶命しているのを確認しては 飛び出したのだが こいつは 颯 甘く見ていました そうです 御堂 甚一郎もまた こいつを倒したにも関わらず  再生したと言うか あの黒縄(女の情念の籠った黒髪)で 傷を覆い尽くし はたまた その情念と生気をもってして 彼は 再び いや三度び 復活しました 「ばかめ 騙されおって あの坊主は この先 狭羽湖に向かっておるのじゃな よし 千本坊よそして 覇力坊よ 狭羽湖へ向かえ」と 懐から 小鳥を飛ばした 黒縄坊 一人 草原へと足を踏み入れました
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