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よく見ると、天狗の斜め後ろに更にデカいやつがいる。
テーマは鉄と岩石で巨人を作ってみましょうを体現したような外見で、頭にネジが刺さっていたらもう名前はフランケンしかないだろう。
灰色のゴツゴツした皮膚と白目だけの小さな目、とんでもなくぶっとい腕……って左腕は千切れてしまったのか、肘から先が無くて緑色の(多分血液だと思う)液体がバタバタと垂れている。
表情はよく分からないけど、2人とも残念そうに海の方角に目をやってる。
つられて視線を送った海はというと、地鳴りのような重苦しい音を響かせている。
「すまない。守れなかった」
また違う声。
その主は僕の肩に手を置く。
いつの間にか、右横に天狗と同じ位の身長の白人が立っていた。
長い髪を後ろで束ね体のあちこちから流れる血と古い傷跡、悔しそうに真一文字に結ばれた口元、歴戦の戦士然とした佇まい。
それを見た瞬間、僕は遺伝子レベルで全てを悟った。
「あっいえ、あざす」
恐らく地球上の全ての生き物を代表したであろう感謝の言葉は、謝意の歴史上最も軽いものになってしまった。
戦士は肩に置いた手に僅かな力を込め、僕の礼に答えた。
目に写る海面は気が付けば空まで届く壁のようにせり上がり、まるで世界から僕たちの日本列島が寸断されてしまったようだった。
月も隠れてしまい、先ほどは真逆の闇が覆う。
この期に及んで僕の頭の中にあったのは(あれ?俺今何歳だ?)だった。
全世界同時多発的に起こった四百メートル級の津波は、地球上のありとあらゆる生物、文明を破壊し尽くした。
こうして地球の支配権は、新たな種族に交代されることになった。
ーー終ーー
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