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「何なんだありゃ・・・」
相変わらず、両腕を天に向かって曲げ伸ばししている。その動きをジッと観察している内に僕は気付いた。
「あれって月に向かって、お祈りとかしてるのか?」
呟いている最中、はじめて動きが変わった。
両腕を月に伸ばしたまま動きを止めたのである。
「うわ~何してんだマジで?」「流石にあそこまでいくのは怖え~な」
「マジかよ、ドッキリとかじゃな~よな」「っていうかあれ人じゃね~よな?妖怪?宇宙人?」「誰か居ないかな」
興味と恐怖がごちゃ混ぜになって混乱した僕は、矢継ぎ早に独り言を繰り返し、必至に思考を整理する。
しばらくして、漸くスマホを動画モードに切り替えることに気付いた。
「やべっ、動画撮らなきゃ」
動画アプリを起ち上げスマホをかの人物に向けたタイミングで、月に向かって上げていた両腕がオーケストラの指揮者の如く降り下ろされた。
と、それに合わせて月が動いた。ズレた?
「ふぁ?」
僕の口から間抜けな声が漏れる。
月だったものは海に向かって落下し始めた。
落下というには巨大過ぎる気がして、こぼれ落ちたと言ったほうが、しっくりくるなと僕は呑気に思ってしまった。
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