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さっきまで”それ”があった場所では本来の月が下界を照らしているけど、拍子抜けするくらいの小ささで、むしろ申し訳なさそうにも見える。
というか、中途半端に欠けていて満月ですらなかった。
そんな事を思っている最中も”それ”はドンドン落下スピードを上げて、やがて海中に没した。
”それ”が海中に姿を消すと、海面がもの凄い光を放った。
まるで繊細かつ複雑にカットしたダイヤの板を、内側からとんでもない光量で照らしたような。そんな出鱈目な眩しさが世界を照らす。
僕は眩しすぎて目が開けられなかったけど、暫くするとその光も落ち着いたようで周りの景色を見る余裕も出てきた。
さっきよりマシとはいえ、目に入る世界は夜中とは思えない程の明るさだ。
「遅かったか……」
状況が飲み込めず呆けていると、後ろから声がした。
(えっ?)
振り向くとそこには真っ赤な顔、長く大きな鼻の天狗が立っていた。
「うえっ!あっ!てってん……てん……」
もうそれとしか表現のしようのない完璧な天狗の姿をしている。
法衣のような物を纏っているけど、隙間から除く大胸筋の盛り上がりは尋常じゃない厚みで僕は威圧された。
バイト仲間でアムステルダムからの留学生ジムも、かなり大きいけど(アメフトやってたとか言ってたな)彼よりも一回りはデカい。
「マニアワナカッタ」
さっきとは違う、たどたどしい声がした。
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