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【隣人】
【まえがき】
第一弾はご近所トラブル?
見えざる敵、その正体は??
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<夕方>
ピンポーン(民家のインターホンの音)
△山(女性)「こんにちは、隣に越してきた△山です。お世話になります」
△山「つまらないものですがどうぞ~」と菓子折りを差し出す。
家の住人(隣人女性)がそれを受け取る。
隣人女性「あらあら、どうもこちらこそよろしくお願いします」
<某日昼間>
ガラガラ(△山がガラスの引き戸を開ける音)
△山が庭に出る。
先に庭に出て自家栽培の畑に水やりしている隣人女性が気付いて顔上げる。
二人の目が合う。
隣人女性「こんにちは」
△山「こんにちは」
隣人女性「天気いいですね」
△山「ねえ~、ほんといいお天気」
<某日夕方>
ピンポーン(△山宅のインターホンの音)
△山「はーい」
△山が玄関のドアを開ける。
隣人女性「これ、旅行のおみやげです」
隣人女性が袋に入れた土産物を差し出す。
△山「まあ、ありがとうございます~どちらに旅行に行かれたの?」
隣人女性「⚪️⚪️温泉です」
△山「温泉? いいわね~」
<某日昼頃>
ベランダに干したふとんを叩く△山。
隣人宅の窓が開き、ベランダに隣人女性が現れる。
洗濯物を干し始める隣人女性にあいさつされる。
隣人女性「こんにちは」
△山「こんにちは」
隣人女性「暑いですね」
△山「ね~」
「バンバン、バンバン」(△山が布団叩く音)
<某日昼間>
△山の家の電話が鳴る。
△山が電話に出る。
▽山「もしもし」
「……」
△山「もしもし~?」
「ガチャッ」電話を切られる。
(同時に受話器を叩きつけたような音響く)
<某日昼間>
おしゃれをした△山。
玄関先でラフな服装の隣人女性と遭遇。
リードで繋いだ小型犬を連れている。
△山「こんにちは」
隣人女性「こんにちは」
△山「あら~、かわいいワンちゃん。何歳ですか?」
隣人女性「10ヶ月です」
<某日昼間>
△山「こんにちは」
隣人女性「こんにちは」
あいさつを交わす△山と隣人女性。
<同日夜>
数人の話し声飛び交う。
「バタン」「ドタン」(物音)玄関、車のドアの開閉音が繰り返し鳴る。
同時に声を張り上げて何か言う女性の声が響く。
しばらく続いた後、隣人宅に人が入って行くらしき物音がし、ようやく静かになる。
<某日朝>
△山がポストに新聞を取りに行く。
隣人女性と遭遇する。
△山「おはようございます」
隣人女性「おはようございます」
<数日後の昼頃>
ラジオを付け、鼻歌を歌いながら洗濯物を畳んでいる△山。
「ドーン」(物音)壁に何かが激突したような大きな音がする。
壁のほうに目を向けて動きが止まるが、あまり気にせずまたすぐ洗濯物を畳み出す△山。
「ドーン」(物音)
また同じ衝撃音が鳴る。
△山「何?」ネズミかしら? と天井を仰ぐ△山。
以降、同じ音がしなくなる。
<某日昼間>
△山「こんにちは」
隣人女性「こんにちは」
あいさつを交わす△山と隣人女性。(ロボットのような人工的な笑顔)
<某日夜間>
(△山宅の寝室)
「ブーーーーーーーンーンーン」(低周波のような音が継続して鳴り響く)
ドライヤーで髪を乾かして布団に入ろうとした△山が顔をしかめる。
△山「何の音?」
夫「うーーん」
隣の布団で寝ていた夫は、眠いので寝返りを打って無視する。
正体不明の騒音が朝方まで続き、眠れぬまま朝を迎える△山。
<某日朝>
△山が家の周辺をほうきで掃いていると隣人女性が家から出てくる。
△山「おはようございます」
隣人女性「おはようございます」
やつれた笑顔で隣人女性にあいさつする△山。
あいさつを返す隣人女性。
この日常は現在も継続中――――
好かれているのか嫌われているのか仲がよいのか悪いのか
そのどれでもないのか……
この世でいちばん怖いのは人間かもしれない。
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