【テレビ】

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【テレビ】

【まえがき】 どこにでもいそうな今時女子タレントのれいんは、誰かに覗かれているような不気味な視線に悩まされていた。エスっ気があるが頼りになるマネージャーにそのことを相談し、解決に向かうかと思われたが…… …………………………………………………………………………………………… <走行中の車内> マネージャーが運転する車で女性タレント移動中。 タレント(れいん)「聞いて聞いて」 マネージャー(鵜野)「うん、聞いてるよ」 れいん「最近家にいる時、視線を感じるの」 鵜野「どんな?」 れいん「誰かに見られてるような」 鵜野「気のせいじゃない?」 れいん「う゛~ん、でもなんかいつも見られてる気がするんだよね」 鵜野「そんなに怖かったら部屋中の電気付けとけば」 れいん「だから付けてるよ、いつも。だけどテレビ消した時、ぱって画面が暗くなって背景が映り込むじゃん? もしそこに誰か写ってたら怖くない?」 鵜野「はっはっはっはっ、最近なんか怖いテレビでも見たんじゃないの? リ○グとか」 れいん「リ〇グ?」 鵜野「あー、れいんちゃんの世代は知らないか。最近また新作映画やるみたいだから見てみれば?」 れいん「どんな映画?」 鵜野「貞○っていう女の人がテレビの中から出てきて人を襲うやつ」 れいん「ちょっとぉ、なんでそんな怖い映画、今進めるの!? 鵜野さんてどエスでしょ?」 鵜野「かもね」 れいん「もう、余計怖くなっちゃったじゃん! 鵜野さん、今日うち来て調べてよー。このままじゃあたし、怖くてノイローゼになっちゃう!」 鵜野「わかったわかった、じゃあ明日ね」 れいん「えーーーーっ、なんで今日じゃないの!? なんで今日来てくれないのーー??」 鵜野「今日はもう遅いから」 れいん「じゃあ……」 鵜野「じゃあはないよ、明日ね」 れいん「うえぇぇーーん、鵜野さん絶対どエスだああ!」 鵜野「明日家に行ってあげるって言ったでしょ? こんなやさしいどエスはいないよ」 れいん「ふええーーなんか言いくるめられた……」 鵜野「それより明日朝早いから、寝坊しないようにね」 れいん「怖くて眠れないから寝坊するー」 鵜野「堂々と開き直らない」 れいん「ほーい」 鵜野「朝モーニングコールしてあげるから、携帯枕元に置いといて」 れいん「ほあーーい」 <翌日> れいんがレギュラーとゲストで出演するバラエティ番組3本撮影終わり、その日の仕事終了。 れいん、鵜野マネージャーに車で家まで送迎してもらう。 <れいんが住むマンション> れいん、鵜野を部屋に招き入れる。 コンセントや家具の隙間や家電に盗聴器などあやしいものが取り付けられていないか一緒に探す。 二人で分担して玄関、トイレ、風呂場、キッチン、寝室、ベランダ、全部屋探し終える。 れいん「なんかあやしいものありましたか? マネージャーさん」 マイクを向けるようなジェスチャーで鵜野にインタビューするれいん。 鵜野「なかった。そっちはなんかあった?」 れいん「なかった。なにも見付からないのが逆に怖い……」 沈んだ表情になるれいん。 鵜野「またなんかあったら言ってよ。じゃあぼくはこれで」 玄関へ向かう鵜野。 れいん「えっ、ちょっと待って、鵜野さん!」 鵜野立ち止まり振り向く。 れいん潤んだ目で鵜野にSOSを送る。 れいん「まだ怖いんだけど……」 鵜野「大丈夫だよ。そんな心配しなくても。なにも見付からなかったんだから」 れいん「そうだけど、怖い……」 鵜野「うーーん、じゃあ、いつでも電話に出られるようにしておくから。れいんちゃんも家にいる時は常に携帯持ち歩いて、もし何かあった時はぼくの携帯に電話して? すぐにかけつけられるようにしておくから。それなら安心でしょ?」 れいん「鵜野さん、神ぃぃ~~!」 鵜野「じゃ、そういうことで。戸締りちゃんとして寝るんだよ? おやすみ」 れいん「うんっ、おやすみなさぁい♪」 鵜野に言われたことを忠実に守り、スマホを常に持ち歩き、夜を迎えるれいん。 テレビを見る時も、夕飯を食べる時も、トイレに入る時も、着替える時も常に傍らにスマホを置いて過ごす。風呂に入る時は脱衣所に置いてある洗濯機の上に置く。 れいん「なんか、見られてるみたいでちょっとはずかしいな……ふふ」 いつも見守られているような気がして、安心してシャワーを浴びるれいん。 風呂から上がってテレビ付ける。 れいん「もうこんな時間か。そろそろ寝よーっと……」 眠い目を擦り、リモコン手に取るれいん。 すっかりリラックスモード。いつもは消さないテレビを消す。 テレビの画面が暗転する。 れいん「!?」 真っ暗な画面に映る自分とその背景を見て、一瞬悪寒が走りびくっとする。青ざめるれいん。 れいん「……」 れいん、恐怖が蘇りまた家中の電気を付ける。テレビ画面を見るのが怖くなり、逃げるようにベッドに入り、毛布をかけて中で縮こまる。 充電器に差し込んだスマホを傍らに置き、震えながら一夜を過ごす。 <水曜日> 翌朝マンションに迎えに来た鵜野に泣きつくれいん。 れいん「鵜野さーん、怖かったよー!」 鵜野「おはよう、れいんちゃん。どうしたの? テレビの中から貞〇が出てきた?」 れいん「ちがうもう、鵜野さんのイジワルっ!」 鵜野「ほら早く支度して。遅刻するよ」 れいん「昨日の夜もぜんぜん眠れなかったからふらふら~。テレビ消したらまた怖くなっちゃってさあ……」 鵜野「後で聞くから早く着替えて下降りてきて、車の中で待ってるから」 鵜野、部屋を後にする。 <鵜野の車の中> 現場に向かって走行中。 れいん「部屋ん中に、防犯カメラ付けよっかなあ」 鵜野「防犯カメラ?」 れいん「うん」 鵜野がクスクス笑う。 れいん「笑わないでよ! 人が真面目に話してるのに~」 鵜野「ごめん……クスクス」 れいん「今日カメラ買いに行くから、鵜野さん帰りに電気屋さん付き合って」 鵜野「しょうがないなぁ……」 ため息混じりにぼやく鵜野。 れいん、フッション誌やテレビ情報誌のグラビア撮影。 終了後、鵜野マネージャーと一緒にテレビ局を出る。 鵜野が運転する車にれいん同乗し、その足で家電量販店に向かう。 カメラを買い、さらにその足でれいんのマンションへ向かう二人。 鵜野が部屋の天井に防犯カメラを設置し、録画用のレコーダーなどの配線繋ぐ。 鵜野「オンオフの切り替えはこのボタン押せばいいから」 れいん「うん」れいん、こくこく頷く。 れいん「ありがとう、鵜野さん」 鵜野「いいえ、どういたしまして」 れいん「やっぱ頼るべきはマネージャーだねっ!」 れいん、とびきっきりの笑顔。 鵜野、いろいろ引っ張り回され疲れを滲ませた顔。 鵜野「はは……」 鵜野、乾いた笑い。 れいん「鵜野さんてさあ……」 鵜野「何?」 れいん「やさしいよね。どエスだけど」 鵜野「ディスってるよね?」 れいん「あははっ、てかさあ、なんでこんなにやさしくしてくれんの? もしかして“れいんちゃん”がかわいいから? いやんっ、照れる~」 鵜野「……帰るわ」 れいん「うそうそ、かわいいのはほんとだけど。てかてか、なんで?」 鵜野「なんでって、れいんちゃんが困ってるから助けただけだけど」 れいん「なんだ、ただのいい人じゃん。じゃあ、じゃあ、他の子でも同じことしてあげるの?」 鵜野「どうかな、他の子はこんなにマネージャーを連れ回したりしないし」 れいん「あ、いまのディスッてるでしょ?」 鵜野を睨むれいん。 鵜野「クスクス」 いじわるな顔で笑う鵜野。 れいん、口とんがらせていじける。 鵜野「じゃ、もう大丈夫そうだし、ぼくは帰るよ」 れいん「あっ、うん」 鵜野「明日は午前中スケジュール入ってないから、昼までゆっくり寝てていよ」 れいん「え、そうなんだ。うれしい♪ 明日は何時入り?」 鵜野「4時入り」 れいん「じゃあ……」 鵜野「午後2時に迎えに来るから、それまでに起きてすぐ出られるようにしといて」 れいん「了解~」 <木曜日> れいん、正午にセットした携帯のアラームで目を覚ます。 キャップを被り、あとはとくに変装もしないラフな格好で、自転車に乗ってコンビニへ。 小一時間、買い物や立ち読みして時間を潰してからマンションに帰宅。 室内の壁に吊るした時計を見るれいん。 れいん「まだ1時半か……」 れいん、スマホを傍らに置く。 れいん「ひまだからゲームでもしようっと」 れいん、テレビ付けてテレビゲームで遊び始める。 2時頃迎えに来た鵜野マネージャーの車でテレビ局へ向かうれいん。 れいん、その日のスケジュールを全てこなし、鵜野の車で自宅に送迎してもらう。 <車内> 鵜野が運転しながられいんに話を振る。 鵜野「昨夜は良く眠れた?」 れいん「うん、おかげさまで」 鵜野「そう、それはよかった」 れいん「鵜野さん、金曜日空いてる?」 鵜野「て、明日だよね」 れいん「そう、明日」 鵜野「急だね」 れいん「そうなんだけど、鵜野さんにお礼したいからうち来ない?」 鵜野「いいよそんな、お礼なんかしなくても」 れいん「なんで~、一緒にタコパしようよ~」 鵜野「タコパ?」 れいん「そう、出来立てのタコ焼きでもてなすから来てよ」 鵜野「うぅーー~~ん……」 れいん「どうしたの、食べる前からおなかでも痛くなった?」 鵜野「よくわかったね」 れいん「遠慮しないで、もてなすから」 鵜野「遠慮じゃなくて拒絶なんだけど」 れいん「じゃ、そういうことだから。明日の12時うち集合ね」 鵜野「ぼくの話聞いてた?」 れいん「もてなすから」 鵜野「ハラスメントで訴えようかな……」 れいん「何ハラだよ」 鵜野「タコパハラスメント。もしくは、おもてなしハラスメント」 れいん「そんなにいやなんかーい!」 <金曜日> れいん、丸一日オフ。 12時頃インターホンが鳴り、れいんの自宅のマンションに鵜野が訪ねてくる。 鵜野、勘違いされないためか、ジャケットを羽織っている。 れいん、鵜野を家の中に入れる。 テレビやソファーがある部屋に誘導し、飲み物を出すれいん。れいん、たこ焼き機でたこ焼きを焼く。 れいん、出来上がったものを皿に移して鵜野に差し出し、二人で団欒。 鵜野「あれから何か変わったことなかった?」 れいん「うん、今んとこはない」 鵜野「そっか、じゃあよかった」 鵜野、残りのたこ焼き摘まむ。 鵜野「防犯カメラの映像見た?」 れいん「あ、そういえばまだ見てなかった」 鵜野「食べ終わったら見てみようか?」 れいん「え、見るの? なんか怖い……」 鵜野「そのためにカメラ付けたんだよね?」 れいん「そうだけどぉ、もしなんか写ってたら怖いじゃん~」 鵜野「見る気ないなら、カメラ外そうか」 鵜野、しらけた顔でソファーから腰を上げる。 れいん、慌ててそれを制す。 れいん「うそうそうそうそっ! わかった、見るから、怒んないでよ鵜野さ~ん」 鵜野、腰を下ろす。 れいん「はい、鵜野さん。お口開けて、あ~ん」 鵜野冷ややかな眼差しで口開けて、たこ焼きパクっ。 <数分後> 鵜野「じゃあ見てみようか」 れいん「うん……」 機械に弱いれいんに代わって、鵜野が防犯カメラの映像をレコーダーを操作してテレビで再生する。 日付は二日前の水曜日になっている。 れいん、ホラー映画を見るような感覚で、息を飲んでテレビ画面を見詰める。今居る部屋が画面上に映し出される。 その奥の玄関がある方向から一人の女性が歩いてくる映像が映る。 れいん「あ、あたしだ! って当たり前か」 鵜野「……」 れいん「鵜野さんが帰った後だ」 鵜野が帰る時、防犯カメラの電源を入れていったことを思い出すれいん。 画面上にれいんの日常生活がどんどん写し出される。 0時を過ぎた頃、タンスの引き出しを開ける自分を見て、慌てて叫ぶれいん。 れいん「あ、ちょっと待って! この後着替えてるとこ映るからちょっと早送りする。いいって言うまで、鵜野さん後ろ向いてて」 鵜野、映像が映る画面に背を向ける。 れいん不慣れな手つきでリモコンを操作する。 れいん「鵜野さん、もう前向いていいよ」 鵜野向き直る。 映像の日付が翌日の木曜日になっている。 鵜野「結構早送りしたね。途中で何も怪しいもの映ってなかったの?」 れいん「うん……多分」 鵜野「これからは着替えとか見られたくない時は電源切っときな」 れいん「あはは……そうする」 れいん、おどけて舌を出す。 キャップを被ってれいんが出かける様子が画面に映る。 バタンと玄関のドアが閉まった後、無人になった室内が映し出される。 変化のない映像が続く。 れいん「なんにも起きないね」 物音ひとつ響かない退屈な映像に、緊張感が薄れてだんだんだれてくるれいん。 画面上のれいんが外出してから数分が経過。 突然その部屋に何者かが侵入してくる。 れいん「え? あれ?」 鵜野「……」 黒いウィンドブレーカーのフードを被った人物が俯き加減で室内を散策する。 れいん「ちょ、ちょっとこれ泥棒!?……」 怪しい侵入者の姿を目の当たりにして動揺し、混乱するれいん。 れいん「うそでしょ!?」 恐ろしくなって声が震えるれいん。 侵入者が防犯カメラにじりじりと歩み寄り、画面を覗き込む。 その眼が殺気を帯びたようにギロリと光る。 画面いっぱいにその顔が写し出される。 鵜野だった。 れいん「あ、あ、あ……」 恐る恐る首を巡らせて、今まさに自分の隣にいる鵜野の顔を垣間見るれいん。 いつもの顔に見たこともない影が落ちている鵜野。 れいん「こ、これって……?」 鵜野「……」 鵜野が続ける沈黙の意味が怖くなって、彼の傍から徐々に離れていくれいん。 鵜野「どうしたの、れいんちゃん? なんで離れるの? ぼくが怖い?」 鵜野の背後を気にして、眼球だけキョロキョロ動かすれいん。 テーブルの端の方ーー鵜野の背後にれいんが置き去りにしたスマホがある。 「これがほしいの?」と鵜野がテーブルに手を伸ばし、れいんが置き忘れたスマホを手に取り、嗜虐的な笑みを浮かべる。 「はい」とれいんにそれを差し出す鵜野。 あまりにあっさりと差し出され、不気味に思って警戒するれいん。 震える手でスマホを受け取る。 怯えるれいんを観察するようにじーっと眺める鵜野。 鵜野「電話しないの? 警察に」 れいん「なんでそんなに落ち着いてるの?」  鵜野「もうばれちゃったし、騒いでもしょうがないでしょ」 れいん「……」 鵜野「いいよ、ほら電話しな」 れいん「なんでこんなことしたの……?」 目に涙を浮かべるれいん。 鵜野「れいんちゃんてさあ、しょっちゅう寝坊するじゃん? だから家でいつもどんな生活してるのかなと思って」 バカにしたように、鼻から笑声を漏らす鵜野。 れいん「そんな理由? そんなどうでもいいこと調べるために人んち入って警察に捕まってもいいと思ってるの?」 鵜野「いいとは思ってないけどしょうがないじゃんもう、やっちゃったんだから」 れいん「もう、信じられない……!」 鵜野「信じなくていいから、早く電話しなよ。ほぉら」 れいん「やだっ!」強く拒絶するれいん。 「なんで? やだよこんなの!」 頭を振って、とにかく嫌がって必死で抵抗する、れいん。 鵜野「じゃあ、ぼくが自分で警察に電話しようか?」 れいんからスマホを奪い、電話をかけようとする鵜野。 れいん「だめっ!」 慌てて鵜野からスマホを取り返すれいん。 鵜野「ちょっとどうしたの?」 鵜野が眉間に深い皺を寄せた顔で、れいんを見返す。 れいん「鵜野さん、あたしが警察、電話したらどうするの?」 鵜野「え、ふつうに捕まるけど」 れいん「“ふつうに”って……なんで?」 鵜野「もう諦めたから」 感情が窺えない淡白な声で鵜野が言う。 れいん「ほんとに諦めたの?」 鵜野「うん」 れいん、震える手でそーっとスマホのディスプレイに指を持っていく。 それをじーっと見詰める鵜野。 その視線に怯えてまた後退るれいん。 れいん「鵜野さん」 鵜野「何?」 れいん「あ、あたし通報しなくてもいいよ。鵜野さんだったら別にいいし」  鵜野「よくないでしょ」 れいん「ううん」 鵜野「駄目だよ、こういうことはきちんとしておかないと」  れいん「いいの!」 鵜野「どうした急に? 声大きいよ」  れいん「あたし、鵜野さんのこと……好きだから」  鵜野「ぼくのことが好きなの?」  れいん「うん……」  鵜野ニヤリとする。  鵜野「ぼくも好きだよ」とれいんをハグ。 鵜野が抱擁の手を緩め、れいんと見つめ合う。 れいん、怯えと悲しみを滲ませた潤んだ目で鵜野を見つめ返す。 鵜野がそっと腕を伸ばし、掌でれいんの頬をやさしく包む。 その手をさらに下に滑らせ、スカーフを巻いたれいんの首に視線を落とす鵜野。 スカーフを巻いたその細首に指を這わせ、両手でそっと包み込む。瞬きもせずに鵜野の目を見つめるれいん。鵜野の双眸がカッと見開かれた次の瞬間。一気にその手に力を込める鵜野。 れいん「っ……!?」 気道を塞がれ目を剥く。 握っていたスマホが手から離れ、ラグの上に落下する。 苦しみもがき狂うれいんに容赦なく、鵜野が渾身の力でれいんの首を圧搾する。 れいん「ッ!……ッ…ッッ……」 やがてれいんが事切れて、がくんと後ろに向かって頭が倒れ、瞳孔が開いて口からよだれを垂らした顔が天井を向く。 鵜野「でも、言うんでしょ?」 口の端にうすら笑いを浮かべて、独語する鵜野。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━鵜野にとってれいんは、年下のくせに生意気なタレントだったが、同時に手をかけてきた分かわいくもあった。マネージャーとしてタレントれいんを成功へ導くために彼なりに尽くしてきたが、自堕落な彼女に辟易した彼は、いつしか彼女にその罰として屈辱を与えてやりたいという悪意が芽生え、盗撮が始まった。仕事の撮影前に預かったれいんの携帯電話にアプリを仕込み、遠隔操作で操れるようにした。そのようにしてれいんのカメラを起動させ、撮った動画を自分のパソコンに受信して、彼女の日常を覗いていた。そんなことは知らない無邪気なれいんを見るのは楽しかったが、感付かれたことで状況が変わった。最初は彼女が見えない恐怖に怯える姿を見るのは愉快だったが、次第に面白くなくなってきた。気付かなければ手を出さないつもりでいたのに、生意気にも気付いてしまった彼女が許せなくなった彼は、自ら彼女を誘導し、犯人が誰かを知らせた上で絶望と恐怖に陥れてから殺害することを企み、こうして決行した。れいんは鵜野に好意を持っていた。しかし鵜野が犯人だと知り、恐怖に陥ったれいんは、説得を試みた。しかしそれは失敗に終わったのである。
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