誰にも知り得ない裏側の話

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 その日も広大なSNSの波を泳いでいた彼女は、ふと、自身のフォロー数とフォロワー数が一つずつ減っていることに気づいて真っ青になった。もともとそんなに多くはないので、数に変動があれば気づくのは当然だった。しかし、誰がいなくなったのか、を特定するまでは少し時間がかかった。  結果、定期的にやりとりをする相互フォロワーのアカウントが消えていることを知り、彼女は絶望の淵に立たされた。 「マジかぁ……せっかくできた友達だと思ったのに……」  趣味の話が合い、些細な呟きにも答えてくれる心優しいフォロワーだった人物が突然、SNS上から姿を消した。それも一言の挨拶もなく、何の痕跡も残さず、最初からいなかったみたいに。  単純に、SNSをやめてアカウントを削除したならいい。挨拶がないことは悲しいが、相手にも何か事情があるのだろうと察してここはぐっと堪えよう。  問題は、ブロックされた場合だ。こちらが何か粗相をして相手を傷つけてしまった結果なら反省し、真摯に受け止めよう。だが、特に理由もなくなんとなくブロックされたのだとしたら悲しみを通り越して憤りを覚える。そんな薄情な人物ではなかったと記憶しているが、いまとなっては確かめようがない。 「うう……悲しいから今日はCUENTOの初ライブの円盤でも見よう……」  そっとスマートフォンを机に置いた彼女は、代わりにペンライトを手に取って部屋の明かりを消した。
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