誰にも知り得ない裏側の話

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「え、うそっ」  悲しみを紛らわそうと大好きなアイドルの初ライブ映像を見て一人、白熱していた彼女は、スマートフォンに届いた通知を見てペンライトを放り出し、それを握りしめた。画面を食い入るように見つめ、間違いがないことを何度も確認してほっと胸を撫で下ろす。 「よかったあ……エリカさん、復活してる……」  消えたはずのフォロワーがアカウントを復活し、挨拶に来ていた。それによれば、操作ミスでアカウントが消えてしまったとのこと。可愛らしい絵文字とともに「ごめんなさい」の文字が添えられている。どうやら、嫌われたわけではないようだ。 「いえいえ、びっくりしましたが、またよろしくお願いします……と」  返事を送ってしばらくすると、また返事が来た。こちらこそ、の文字に彼女は胸の穴が満たされていくのを感じた。 「よーし、明日も頑張ろう!」  早々とテレビの電源をオフにして布団に入る。明日も仕事なのだ、いつまでも起きているわけにはいかない。  が、寝る前の日課としてまたSNSの海を少し泳ぐ。  大好きなアイドルの呟きをチェックし、トレンドに変化がないかチェックし、再び復活したフォロワーの様子をチェックする。  皆に向けての「ごめんなさい」の最新投稿にハートを送り、彼女は満足して眠りについた。
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