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「さ、て、ここが今日からの君の部屋ね。使える部屋が割と少なくて二人部屋になってるのは勘弁して頂戴。…レイ、入るわよ。」
扉に掛けられている鍵を素早くタップして外し、扉を少女は押し開く。 ゴッ、と鈍い音がした。
「〰〰〰ッ痛ぁ!!」
顔面に扉の直撃を受けて尻餅をつく人影が一つ、金色を帯びた白髪の少年だった。
その紅玉髄の様な紅い瞳がこちらを見やる。
「ごめんごめん、わざわざ出迎えてくれなくてもよかったのに。」
まったく悪びれない様子で少女は言って紫苑を振り返る。
「彼が君の同室の相手ね。ついでに演練とか合成獣と戦う時の二人組の相手でもあるからよろしくやっといて。」
「…えっあっ…うん。」
「じゃあ一段落したら、能力測定したいから来て、場所はレイに教えて貰えば良いから、じゃあね。」
言うだけ言って彼女はバタンと戸を閉めて何処かへ行ってしまう。
後にはスーツケース片手に困惑する黒髪の少年と、未だ額を押さえ悶絶中の白髪の少年が残された。
「ええと、その悪りいな、痛むか?」
「ああ…まぁアリシアのアレは割と何時もの事だし。それにアンタが謝る理由無いだろ。心配される程僕もヤワじゃないし。」
押さえていた手を地に着いて、のろのろと少年は立ち上がる。
「僕はレイ=カーネリアン=アルゲトリデン、割と部屋汚くて悪いんだけど中入りなよ。シオン義兄さん。」
「……義兄さん…?」
名前を知られていることには何の疑問も沸かなかったが、最後に添えられた呼称に 紫苑は眉根を寄せる。
「そ、戸籍の上では、僕もメグさんの義弟だから。」
後で聞いたところによると、彼女は……というか彼女の家はかなりの大金持ちで行く所行く所で治療を施した異能者の孤児を養子にしているらしい。 レイの様な既に協会に入ってる者は“巣立った”ということで もう、資金援助は一切ないらしいが。
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