縁側と父と私

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虫の声がこんなに聴こえるんだ。 空には星がこんなにあったんだ。 こんなのすごく久しぶりに見た気がする。 最近はずっと下を向いてたし自然を楽しむ余裕なんてなかった。 私は今、月明かりの下、縁側に座って缶ビールを呑んでいる。 35歳未婚。 何もかもが嫌になり3年前に実家に戻った。 婚活も挫折した。 いい歳した女が結婚もしないでなにやってんの?って自問自答する毎日。 『生きてるのが恥ずかしい』 こんなことを思うようになっていた。 他人への嫉妬で頭がパンクしそう。 『死んだ方がいいのかな』 もう限界だった私を縁側に誘ってくれたのは10年以上口をきいていなかった父だった。
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