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そのまま両腕が腰から回され、背中に彼を感じる。気付かなかったのに、不意打ちだったのに、何故かわたしは少しも驚かなかった。
陵介さんはただただわたしを抱きしめた。何を言うでもなく、何をするでもなく、その償いのように、降り注ぐシャワーからわたしを守っている。
何が言いたいというのか。わたしを引き留めたいということなら、もう既に承服した形になってしまっている。この上何を植え付けて、きつく縛り直そうというのだろう。もう観念するのでやめてほしい。これ以上、わたしの心を砕くのはやめて ―――
「足りない?」
わかってるクセに。
腕が下がってくる。つっと割れ目に押し入ると、器用な指でこねくり回して、あっという間にわたしの腰を引いた。わたしは両腕を使わざるを得なくなって、湿った壁に力なく寄りすがる。
ちょうど当たっている。わたしの欲情を掻き立てるように掠めてきては、離れる。外側だけの刺激に焦れてきたわたしを、彼は見逃さない。鬱陶しそうにシャワーを止めた途端に急な攻撃を仕掛けてきて、わたしは思いがけないほどの声を出してしまった。
「いい声。響いて、最高。」
わざと耳元に唇を寄せて囁く。低く、甘く ―― 敢えてチューニングした声で。わたしを、くすぐるための戯れ。陵介さんは、わたしのことを、トテモヨク知っている。
だから、この体勢のわたしに何をどうすればよいかもこの上なくわかっているし、そのせいで、あっという間にわたしは窮地に立たされる。啖呵を切ろうとやってきて、縁を切ろうとのた打ち回って、結果、何度イかされてしまうのだろう。
「っ…………」
声を噛み殺しきれなくて、悔しい。身体の芯が冷える感覚に震えながら、全身に走る恍惚に耐える。しかし陵介さんはそんなわたしのそこを押し広げて、強引に侵入すると最奥に居座った。
「やっ……まだっ…………あぁっ!」
イき終わっていない身体にその刺激は強すぎて、わたしは絶頂を強制的に延長させられる。むしろ、新たな波を得て。こういう機を突く遠慮のなさが、わたしを惚けさせて、溺れさせる。判断力を削ぎ取っていくのだ。だから、事実、今わたしはこう思ってる。
「もっと………もう一度………」
かーわい。と呟いて、彼は強烈に打ち付けてきた。
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