鬱ぐ、つかまる

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 「あ……わたし、ちょっと……」  「どうしたの? あ、道わかんない? 俺知ってるから、やっぱ一緒に行こ! ね!」  健さんの(まばゆ)いキラキラを前にすると、勝てる気がしない。どうしたらこんなにポジティブになれるのだろう。都合良く解釈するコツがあるなら、是非ご教授願いたい。  そしてわたしは、相変わらず断るのが苦手だった。この状況でうまく断れるほど、今のわたしは頭が回らない。  「じゃあ、お願いします……」  「やった! テンション上がるなぁ♪」  人の感情を汲み取るのが得意な人だと思ったことを、訂正するべきだと思った。  「まだちょっと時間早いしさ、寄り道しない?」  確かに、こんな時間に現地に着いても暇を持て余すだけだった。とはいえ、健さんと二人きりというのは、あまり望ましくない。  わたしが答えあぐねているのを見て、健さんは優しく笑った。  「大丈夫、取って食べたりしないよ。」  「いえ、あの、そういうわけでは……」  「外にしよう。ほらそこ、いい公園があるんだ。」  案内されたのは、見通しのよい、池のある美しい公園だった。
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