望まれない好意

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「香水変えましたよね。」 「さすが、よくわかるね。気に入った?」 「こっちの方がすきかもしれません。すごく似合ってる。」 「そそられちゃう?」 「そそられちゃう。」 ろくでもないやり取りを繰り返し、気付けば1時半を回っていた。 よく付き合ってくれるな、とは毎回思っていた。彼は案外、わたしが満足するまで切ろうとはしない。だからうっかり、時間に気付かないフリをしてしまうのだ。でも、さすがにそろそろ潮時だろう。 「明日も、早いんですよね。」 「そうだよ。起きれないよ。茉帆ちゃんのせいだよ。」 「そうですね、ごめんなさい。陵介さんからの電話が嬉しくて、つい引き延ばしてしまいました。」 「可愛いこと言うね。そういうとこ好きだよ。」 「期待してしまうのでやめてください。」 「あ、それは困るからやめとく。」 ちょろい女なので、いとも簡単に上げて落とされる。対外的でない顔つきの彼が容易に想像でき、ゾクゾクした。あぁ、ちょろいというより、マゾヒストなのだろうか、わたしは。 「相変わらず正直ですね。ところでしますか、いつもの。」 「してくれるの?」 「そういう流れでしたよね。」 「まぁそんな淡々と言わなくても。6時にお願い。」 「わかりました。」 「楽しみにしてるよ。おやすみ。」 おやすみなさい、と呟きながら電話が切れるのを待った。珍しく、今日は少し長い気がした。 5時50分にアラームをかけ、眠る準備をする。考えるべきことはあったが、今は向き合いたくなかった。逃げるように陵介さんの体温を思い出し、再現する。そこに温かみは得られないが、罪を自覚して溺れるのには充分であった。 思い知りたかった。自分がどんな人間であるかを。 彼に、愛されるはずなどない人間なのだということを。
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