求められる筐体

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これでよかったと、わたしは胸を張って言えるだろうか。 あの日から、幾度となく自問してきた。もう後戻りはできない。百も承知のはずなのに、油断をするとすぐに思考はそこへ彷徨ってしまう。 あのとき抱かれていなかったら、少しは希望を持てただろうか。 それとも、こんな形だけでも、下半身だけでも、繋がれるだけ幸せだったのだろうか。 "こう"なってしまった以上、"彼女"になるための最後の希望を、わたしは自分で打ち砕いてしまった。わたしにはもう、彼の隣で堂々と微笑む日がくることは、永遠にない。 そして、彼の心に触れることもまた、永遠にできなくなってしまった気がしていた。
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