三花 二〇一二年 七月十三日

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 お母さんと足をもつれさせながら病院に行くと、真っ青なお兄ちゃんが床に座り込んでいた。 「一哉!」 「母さん、三花……」 「な、何があったの? 二葉は!?」  お兄ちゃんは最初は呆然としていた。 「わから、ない。二葉と信吾と帰ろうと思ってたら……」  ただ小さな声で話し出して。 「そしたら、いきなりすごい臭いがしだして」  そして、震えだした。 「クラスの奴らと見に行ったら、もう、教室中、真っ赤でさ」  震えはだんだん大きくなっていく。 「みんな、死んでてっ、二葉だけがっ泣きながら座り込んでたっ! 信吾と手繋いでるのに、信吾の奴、胸にっ、大きな穴が開いてて、血だらけなんだっ、どう見ても死んでんだよっ……」 「うそっ……」  幼馴染みで、お兄ちゃんの親友で、お姉ちゃんの彼氏。週に二回はうちに来ていて、私も赤ちゃんの時から遊んでもらってる信吾兄。  頭がよくて優しくて、大好きな二人目のお兄ちゃん。  ーー信吾兄が、死んじゃった……?  お兄ちゃんの言葉が信じられなかった。
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