三花 七月七日

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 気配が遠くに消えて、一気に緊張が解けた。  足が言うことを聞かず、次から次へと膝から崩れ落ちる。 「あれ、な、何なの……?」 「化け物っ……耳長かったよ、うさ、ぎの、化け物……?」 「遠藤と高沢がっ、何でだよっ」 「なんで……ここどこだっ」 「うわぁあーっん」  今見たものは現実なのか。  二人は本当に死んでしまったのか。  自分達がいるこの場所は、一体どこなのか。  息を整えたくても、恐怖から、不安から、体が震え、息も上がるばかりだ。  でも、三花には今目の前に見える姿の方が信じられなかった。 「大丈夫?」  扉の前に立ち、三花達を気遣うその女。  お母さん譲りの色素の薄い綺麗な髪。 「味方ってことでいいんだよな……?」 「助けて、くれて、ありがとうございました」 「敵じゃないから、安心して。怪我した人はいない?」  七年前まで毎日見た県立高校のセーラー服。  優しくて、小学生だった三花にはいつもキラキラして見えて、大好きだったその人は。 「二葉、お姉ちゃん……?」  言葉を絞り出した瞬間、視線が一斉に集まった。
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