三花 七月七日

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「やっ、やだっな、な、にっこれっ」 「うわあああああっ!」 「ヒッ……フッ! ヒッ……」 「……たくないっじっじにたくないっ!」  一人は手で心臓ごと突き刺され。  一人は首を跳ねられ。  一人は胴を真っ二つに割られ。  そして、一人は床へと頭を押し潰された。  さっきまで普通に喋っていたクラスメイトが一瞬にして凄惨な遺体となり、近くにいた生徒達にも血の雨が降り注ぐ。  泣き出す人、立っていられず倒れ込む人、恐怖で呼吸すらままならない人、隅へ隅へと逃げる人、反応は様々だったけれど、みんな少女から目を離すことだけはできなかった。 『イーケナインダイケナインダ! ナノカヲヨバナイカライケナインダッ』  顔回りの皮膚は焼けただれ、両腕の皮膚は半分以上めくれている。水色のワンピースから出た足は傷だらけで、長かったであろう黒髪は、不揃いに切られていた。そして、何より、瞳に光はなく、口元は人間ではあり得ないほどに大きく大きく笑みを作っている。  生きた人間じゃない。
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