三花 七月七日

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 全員が隣の教室に駆け込むと、真っ先に中に入った透がピシャリと戸を閉じた。 「全員いるなっ!?」 「あ、ああ……」  最初にできた会話はそれだけだ。 「こっちよ! こっち!」  二葉の声とニワトリの鳴き声はまだ近くに聞こえるけれど、注意を引くことには成功したらしい。少しずつ昇降口の方に向かっているのがわかる。    それが確認できて、ようやくまともに息を吐き出すことができた。 「行ったな」 「大丈夫、そうだ……」  透と昌平が呟いたのを合図にバラバラとその場に崩れ落ちた。  たった数メートルの移動。隣の教室に移っただけなのに、緊張と恐怖で息があがる。大半の生徒が言葉を発することすらできずにいる。  しかし、三花の中では恐怖よりも何よりも、喜びと悲しみの方が勝った。  ーーお姉ちゃんにまた会えた。  ーーやっぱり、殺人犯なんかじゃなかった。  ーーお姉ちゃんがもう死んでるなんて。  ーーあの日、置いていかなければ。  ーーまた、手を離しちゃった。 「あいつら助けに行かないと」 「全員で行ったって危ないだけだ。足が早くて、ある程度冷静な奴だけで行こう。俺と、透と……」 「私が行くよ」 「沖田、助かる。あと誰か」  少しでも姉の役に立ちたい一心で。 「私も行く!」  迷うことなく名乗りをあげた。
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