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だけど、おかしい。
腕をとっても力が入っていない。
ふと足元を見て、足が濡れていることに気がついた。その真っ赤な液体は唯から続いている。
「え……?」
恐る恐る唯の体を起こして、そして後悔した。
お腹の肉がない。
抉りとられている。
しかし三花が悲鳴をあげようとした瞬間、隣から絶叫が響き渡った。
「うわぁああああっ!」
「どうしたっ!?」
「ゆ、祐介っ、顔がっ、顔がないんっ! 顔が、つっつぶ、潰れてっ!」
見れば、昌平が抱え起こした祐介の顔は原型を止めていなかった。鼻は潰れ、眼鏡はひしゃげ、目に食い込み、血塗れになっている。
二人とも生きていないことは明らかだった。
「嘘っ……切山さん、唯は!?」
「ダメ……」
「そんなっ」
その時、向こうで何かが動く音がした。何かが駆けてくる音。人じゃない。これは四本足の動物が走る音だ。
気づいた時には透が叫んだ。
「急げ! 町田連れて、そこの教室入れっ!」
視界の端に白と赤の毛だらけの塊が映る。
あのウサギの化け物だ。
「あっああっ!」
「切山さん、扉開けてっ!」
三花が扉を開け、そこに那智を支えるめぐみと昌平、そして、晋司を抱えた透が駆け込んだ。ウサギはもうすぐそこまで来てる。
「いやあっ!」
扉が完全に閉まった時にはウサギの顔は目の前にあった。
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