三花 七月八日

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「お姉ちゃん!」 「三花……」  二葉は昨日と変わらない。制服の破れもないし、見たところ怪我もない。三花が声をかけると、困ったような、悲しそうな、それでいて嬉しそうな笑みを浮かべた。 「いらっしゃい。待ってたわ」  その声はあまりにも優しい。異質なこの空間で、二葉だけが違う場所にいるようで、一瞬誰も声を出せなかった。  少しの間の後、声をかけたのは透だった。 「あの、昨日は助けてくれてありがとうございました! でも教えてください! 何で死んだ奴らが、元々いなかったみたいに消えてるんですか!?」 「同い年みたいなものだから、敬語なんて使わないで」  二葉は微笑みを浮かべたまま続ける。 「ここで亡くなった人達は、最終日までまるで最初からいなかったみたいに存在ごと消えちゃうの。おまじないをした人以外、誰も覚えてない。写真からも記憶からも消えちゃう。そして最終日、おまじないの終了と共に元の世界に戻る。大切な物を見つけられなければ、死体となってね」 「そんな……」
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