三花 七月八日

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「で、でも!」  次に叫んだのは沙月だ。 「ナノカさんの大切な物っていうのを見つけられたらみんな生きて戻ってくるんですよね⁉︎」 「多分ね」 「多分って!」 「私達は見つけられなかったから。だから私はここにいるの」  その言葉はあまりに重い。今度こそ誰も何も言えなかった。  教室は静寂に包まれた。  みんな本当はわかっている。黙っていても、ずっとここにいても何も変わらない。早く探しに行かないと。  でも昨日の化け物と、ここにいないクラスメイト達の血だらけの姿が脳裏から離れない。体がすくむ。  そんな時、廊下に嫌な音が響いた。  ダンッ  ダンッ  何の音かはわからない。何か柔らかいものを床に叩きつけるような鈍い音だ。それは段々こちらに近づいてくる。 「何これ……?」  三花が呟くと、二葉はそっと目を伏せた。 「ここにいるって気づかれた。うさぎ達が来たみたい」 「やだっ」 「そんなっ」 「大丈夫、扉を開けなければ襲ってこないから」  だけどそれは扉を開けたら襲われるという事。外に出たくても出られないという事だ。 「嘘だろ……」 「どうしよっ」  大きな影は教室の目の前で歩みを止めた。出てくるのを待っているのか、二つの影がそこから動く気配はない。  
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