三花 七月八日

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「どうする……?」  全てを並べ終え、誰からともなく呟いた。 「……このままじゃ昨日みたいに四人殺されるんだよね……」 「この中のどれかが答えならいいけど……」 「でも違ったら……」  全員選択肢がないことはわかっている。でも誰も言い出さない。  ーーもし言い出して、自分がやることになったら。  その恐怖で言い出せなかった。 「あと十分だよ」  静寂の中、二葉の優しい声が更に焦りを増幅させた。迷っている時間はもうない。 「……恨みっこなしで決めよう。じゃんけん……だと時間かかるからあみだでいいか?」  透の言葉に、誰も首を横には振らなかった。 「あの、二葉さん?」 「なぁに?」 「あみだくじ作ってくれませんか?」  二葉は驚いたように小さく目を見開いて、そして困ったように笑った。 「私が作っていいの?」 「この場で唯一関係ない人ですから」 「わかった」  二葉が制服のポケットから取り出したのは生徒手帳だった。 「え⁉︎」  いいんですか。そう声を上げる前に躊躇なく一ページを破り取ると、これまた取り出したボールペンであみだくじを作っていく。どこかに印をつけてそれを折って隠すと、何本か線を付け足して差し出した。 「はい」  後は名前を書くだけだ。それで決まる。
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