三花 七月六日

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 三花の家は学校から徒歩二十分程のアパートだ。築五十年、決して綺麗とは言えないし、部屋も狭い。だけど、二間あって小さなお風呂とトイレもついている。それで家賃が月五万円だから有難い。 「ただいま」  声をかけても一度では返ってこない。 「ただいま」  歩みを進めながらもう一度言って、初めて顔をあげた。 「おかえり」  着古したスウェット姿で床に座るお母さんの周りには、内職で作った造化が散乱してる。もう何年も化粧もしていない顔には、疲労が溜まっていた。 「ああ、もうそんな時間なの。三花、夕飯の材料買ってきて」 「お母さんもたまには外に出ない?」 「こんな格好で出れるわけないでしょ、まだ今日の分全然終わらないのよ」  そう言われては何も返せず、ただ。 「わかった」  頷くしかない。
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