三花 七月八日

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 二葉の腕の中から解放されて、最初に目に飛び込んできたのは血の海だ。  どんな衝撃を受けたらそうなるのか、凄まじい範囲に赤が飛び散っている。そしてその真ん中には。 「うっ……」  クラスメイトだった肉片が横たわっていた。  手足と頭はわかる。でも他は何だったのかはわからない。考えたくもない。赤・朱・紅・桃。原型もわからない程に潰されたモノが辺りに散乱している。  そして、それらを脳が認識すると同時に鼻孔をくすぐるモノがあった。凄まじい異臭だ。その全てを理解した瞬間。 「うぅうううっ!」  数人はその場にうずくまり。 「いや……いや……」  女子達は抱き合って崩れ落ち。 「あああああっ」  幾人もが吐き出した。 「……大丈夫、大丈夫よ」  三花だって、二葉が背をさすってくれてなければきっと吐いていた。それくらい強烈な臭いが教室に立ち込めた。  その時だ。 「もう嫌ぁあーっ!」 「アイリっ!」  石崎アイリの一際大きな絶叫が響いた。駆け出したアイリの行く先は出入口だ。 「ダメ! 止めてっ!」 「アイリっ!」  二葉の叫びに、恋人である内野健が追いかける。でも一歩遅かった。 「開けちゃダメっ!」  その衝撃はアイリが扉を開けたのとほぼ同時だった。
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