三花 七月六日

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 なのに。 「今日もこんな飯か」  雑穀米に、もやしと豚の炒め物、ワカメだけの味噌汁。ため息を漏らすお父さんを、お母さんが睨み付けた。 「仕方ないでしょ」 「わかってるけど、もう少しどうにかできないのか? 三花だってこれじゃ足りないだろ」 「どうしろって言うのよ、私の内職とあなたの日雇いの仕事で。そう言うなら短期の派遣とかないの!?」 「派遣だと名前の登録や審査があるんだよ。わかってるだろ! また三花を転校させたいのか?」 「なら文句言わないでよ」  今は言い争いも絶えなくて、二人の笑顔なんてずっと見てない。 「お父さん、私なら平気だから」 「そうか……」  ーーどうしてこうなったの?  ーー昔に戻りたい……。  そんな願いを口に出すこともできなかった。
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