ナノカさんのおまじない

三花 七月七日

「本当かよー！」
「億万長者になりたいって願ったら叶うかな？」
「おまじないって、小学生じゃないんだから」

　教室のあちらこちらからそんな声が返ってきて、町田那智と高居沙月を含めた女子数名は楽しそうに笑った。

「いいじゃん、試すだけ試すだけ！」
「私達も本当に叶うとは思ってないけど、今日七月七日だよ？　せっかくだし！」
「七回唱えるだけだもん、二、三分で終わるからやってみようよ。それでお願いが叶ったら儲けもんでしょ！　ね！」

　いつもならこんなもの絶対信じない。
　だけど、今日は七夕。
　一年に一度、今日くらい願ってみたい。
　絶対に叶わないことはわかっているけど。

「切山さんもちょっとだけ付き合って？」
「うん」

　気づけば頷いていた。