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二葉の腕の中から解放されて、最初に目に飛び込んできたのは血の海だ。
どんな衝撃を受けたらそうなるのか、凄まじい範囲に赤が飛び散っている。そしてその真ん中には。
「うっ……」
クラスメイトだった肉片が横たわっていた。
手足と頭はわかる。でも他は何だったのかはわからない。考えたくもない。赤・朱・紅・桃。原型もわからない程に潰されたモノが辺りに散乱している。
そして、それらを脳が認識すると同時に鼻孔をくすぐるモノがあった。凄まじい異臭だ。その全てを理解した瞬間。
「うぅうううっ!」
数人はその場にうずくまり。
「いや……いや……」
女子達は抱き合って崩れ落ち。
「あああああっ」
幾人もが吐き出した。
「……大丈夫、大丈夫よ」
三花だって、二葉が背をさすってくれてなければきっと吐いていた。それくらい強烈な臭いが教室に立ち込めた。
その時だ。
「もう嫌ぁあーっ!」
「アイリっ!」
石崎アイリの一際大きな絶叫が響いた。駆け出したアイリの行く先は出入口だ。
「ダメ! 止めてっ!」
「アイリっ!」
二葉の叫びに、恋人である内野健が追いかける。でも一歩遅かった。
「開けちゃダメっ!」
その衝撃はアイリが扉を開けたのとほぼ同時だった。
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