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手を伸ばして亮輔の頬に触れてみる。亮輔が帰ってきてからは初めて触れた。
冷たい。亮輔はこんなに冷たかったか?
最後に会った時に開を抱き締めた腕の強さも暖かさも、もうどこにもない。
いつもいつも、開が恥ずかしくなるくらい身体を近付けてそばにいた、あの暖かい、太陽の匂いのする亮輔はもういないのだと急速に実感する。
全て出てしまったと思えるくらい涙を流したのに、開の目からは止めどなく涙が溢れて、亮輔の棺に入れられた花を濡らした。
棺の蓋が閉められ、亮輔が火葬炉に入っていく。
がしゃん、と炉に鍵をかける音が冷たく響いた。
──だめだ。亮輔が本当にいなくなってしまう。もう二度と会えない……!!
「嫌だ、焼かないで!」
開の心の叫びと、亮輔の母の悲痛な叫びが重なる。
けれど、亮輔の父はうつむいて深呼吸をしたあと、顔を上げると焼却ボタンに指を伸ばした。
亮輔の母も、優汰も、そして開も、もう立ってはいられなかった。
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