芽生え

2/4
648人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
***  細身でも豊かなバストの女ががら空きの電車に一人で乗っている。次の駅で男が二人乗ってきて、突然に女を拘束して体を弄ぶ。次第に乗り合わせる男が増えて、一人の女を様々な方法で蹂躙するという、中身のない、ただいやらしい行為を見せつけるだけの映像だった。  それでも思春期の少年には刺激がありすぎるくらいありすぎて、映像が始まってわずか十分もしないうちに、吉田が体をもぞもぞと動かし始めた。 「なぁ、していい?」 「え?」 「二人だけだし、俺の部屋だし、構わないよな?」  一瞬、言葉の意味がわからなかった。が、開が問うよりも先に吉田はベルトを緩めていて、あっという間に制服のスラックスとボクサーブリーフが、一つにまとまって膝まで下りる。  下半身があらわになり、開は吉田の変化したかたちを目の当たりにした。  開は、映像を見ても吉田と同じにはなっていない。  確かに刺激的な映像なのに、体の昂ぶりに結びつかないのは、自身のものがまだ幼いかたちのままだからだと思っていた。だが、吉田のその部分を見た途端、下腹部が急激に熱を帯びるのを感じて戸惑う。  きっと吉田の興奮が移ったのだ。  開は吉田の下腹から目をそらして映像に集中しようとした。  映像も、映像から聞こえる音もどんどん卑猥さを増している。それなのに吉田が手を動かす音や、漏れ出る吐息の方にどうしても意識が行ってしまい、その姿を横目で盗み見てしまうのだった。  もう何度も自己処理の経験があるのだろう。吉田の手は器用に動いている。吉田は行為に夢中になり、開が自分を盗み見しているなど、思いもしない。 「はぁ。んん、……っ」 『アアッ、ンウッ、アー』  画面の中の女の声と吉田の吐息が混ざる。さして大きな音でもないのにいやに耳にまとわりついて、頭の中を回遊する。
/218ページ

最初のコメントを投稿しよう!