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彼女が走り去った後、僕はあの子の姿を確認した。
見た事もない量の血が溢れ出ていた。目は虚ろだった。四肢はだらりと力なく地面に投げ出されていた。死んでいるだろうことは、子供の目にも明らかだった。
これは、彼女のトラウマになる。
この光景を思い出す度、彼女は自分を責めるだろう。傷つくだろう。深く深く思い悩むだろう。
そう思ったから、僕は、あの子を”隠した”――
もちろん、そのことは彼女には告げていない。言えば意味がない。
あの後、彼女は大人を連れてあの場所に戻ってきた。だけど、あの子はもう”隠れた”後だった。大勢の大人たちがあの子を捜索したが、見つからなかった。
彼女はしばし”ウソつき”呼ばわりされて、傷ついていた。そんな彼女に僕だけが優しく寄り添い続けた。今では、僕は彼女の優しい夫だ。
僕は彼女を、一生守り抜くと決めたんだ。彼女の罪からも、罪悪感からも、彼女を傷つけるすべてのものから――
いや、これからは彼女と、子どもの二人を――
だから、あの子にはいい加減眠ってもらわなければ。
かくれんぼは、とうの昔に終わったんだと、教えてやらないと。
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