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――もういいかい
――まぁだだよ
――もういいかい
――まぁだだよ
――――まぁだだよ
――――――まぁだだよ……
あの日から、あの子と僕の”かくれんぼ”は続いている。あの子はまだ、隠れ続けている。
10歳だったあの時から15年の歳月が過ぎた今でも、なお――。
だけどあの子に問いかける者は誰もいない。あの子一人が、未だに僕に語り掛けるのだ。
『私を探して』と。
いや、違う。
『私を、帰して』
あの子は僕にそう言っているのだ。
何故なら、あの子を”見つけて”あげられるのは、僕だけなのだから
『ねえ、どうかしたの?』と、声がした。
僕がぼーっとしているように見えたのだろう。テーブルの向かいに座る妻が、心配そうに僕の顔を覗き込んだ。僕は安心させようと、精一杯の笑顔を作って、『大丈夫だよ』と答えた。
まだ心配そうに眉を下げる妻が、無意識なのか大きく膨らんだお腹を撫でた。不安な時や心配な時は、必ずそうするのだ。
妻に、そんな不安な仕草をさせてはいけない。産まれてくる子のためにも、僕は家族を安心させられる存在でなくては。
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