32人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
会社から帰ると、タカコの手料理が待っていた。
「冷蔵庫にあった食材、勝手に使ったけど良かった?」
タカコが料理を並べながら俺の顔を見た。
コクコクと頷きながら、俺は不覚にも嬉しくて泣いてしまった。嫌いなピーマンさえも食べきった。
「やっぱり…」タカコが俺に詰め寄る。
「やっぱりピーマン食べられるんじゃん!」
「そ、それは」
口籠っていると、
ふふふ、良かったと笑う。
「食べられないものがない方がいいからね」
「文句言った事ないけどなあ」
「言われたことないけど、嫌いなものは綺麗に避けて残してたよ」
「そうだっけ?」
情けなく笑うと、今度からはちゃんと食べてねと俺を見た。この”今度から”は明日から、ではなく"これから先の未来"指すのだろう。
分かっていたけどきちんと履き違えて会話を続けた。
「ちゃんと全部食べるから、明日っからも冷蔵庫にあるもの使っていいから、ご飯作って欲しい」
そうお願いすると
「お願いされなくてもつくるよ、苦手なものオンパレードだ~」
タカコが両手の全指をうねうねと動かして魔女が呪文を唱える仕草をする。
「なんかすごいものが出てきそうだ」
顔を引きつらせると、出来るだけ美味しく作るよとタカコが笑う。
いちいち全部が幸せだ。
夜抱き寄せるとタカコはダメだという。怪談なんかで昔から言われている通りで俺の体にダメージがあるのだそうだ。そんな事どうでもいいのに。
翌日は映画を観に行った。タカコが好きな甘々恋愛映画。
「いつも観てるこっちが恥ずかしいって一緒に観てくれなかったのに、嬉しいなぁ、いつもさ、カップルだらけの中1人で寂しかったんだよね〜、嬉しい!」
タカコが笑顔を向けてくる。
こんなに喜ぶならもっと一緒に観てやれば良かったな。
昨晩タカコにダメだと言われたけれど、
「1週間くらいなんて事ないし、このまま生殺しの方がダメージなんですよ」
タカコの手を掴んで元気いっぱいの俺のオレに触らせる。
ほぼ泣き落としに近い懇願にタカコは、恥ずかしそうな顔をして腕の中にすっぽりとおさまった。
「これから毎日したいんですけど」
「毎日するの?」
きっと顔を真っ赤にしてるんだろう顔を俺の胸に押しつけたまま聞く。
「タカコちゃんがいいって言ってくれたら」
タカコを引き剥がして顔を覗くと、
真っ赤になってまた顔を埋めてくる。
可愛いくて愛しくておかしくなりそうだ。
もう一度ぎゅっと抱きしめた。
それからは連日昼間は一緒に出かけ、夜は・・・
あっという間に日が過ぎていく。
最初のコメントを投稿しよう!