冷蔵庫(へっつい幽霊)

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   ついに最後の夜を迎えた。昼間は遊園地で遊び倒した。布団に横になって、疲れたね、でも楽しかったねと言いながらジェットコースターで強制的に撮られた写真やスマホで撮った写真を見て笑い合った。  いつのまにか寝てしまっていたようでタカコが静かに起き上がる気配で目が覚めた。俺が寝ている間に立ち去る気のようだ。  タカコが俺に向かって小さな声でお別れの言葉を言っている。 「コウちゃんありがとうね、知り合ってからずっとたくさん愛してくれて・・・自分で思ったよりも駆け足で逝ってしまったから言えなかったのが心残りだったの、愛してるよ」 「違う人好きになっていいからね…」 「再婚もしていいよ…」 「私のこと忘れていいよ………」 泣くのを我慢しているんだろう、言葉が途切れ途切れになっていく。 「本当か?」  堪らず口を開くとタカコが驚いた顔をする。 「起こしちゃったね・・・喋りすぎだよね、ごめんね、うるさくて・・・」 なんだか最後だと思ったら段々盛り上がっちゃったと恥ずかしそうに笑う。 「こっちにおいで」 手を伸ばしてタカコを呼びそっと胸に引き寄せる。 「俺が他の女を好きになっても平気なんだな?」 タカコの涙で俺のTシャツの胸のあたりが濡れるのがわかった。 「いいよ…」 最後まで下手な嘘をつく。 「本当にいいのか?」 グズグズ鼻をすすりながら 「だって、あなたはこれから生きていくのに・・・私はもう一緒にいられないし、何もしてあげられない」 そこでズッと鼻を啜り 「せめて…自由にしてあげるしか、出来ませんぜ旦那」 泣いてるくせに、まだコミカルな言葉を紡ごうと頑張っている。 「本当は?」 タカコはぐっと息をつめた。 嫌だと言いたいのを我慢するときの癖。 「タカコ、本当の気持ち教えてよ」 タカコの唇が震える。 「本当は、いやだ…」 震えているタカコをの背中をなでながら、 「俺も嫌だ、出来ない。タカコだけを愛してる、今夜、俺も一緒にいくから」 「だめだよ!!、それだけは絶対」  腕の中でタカコがもがく。それを強く抱きしめて落ち着かせた後で 「タカコ、あれ見て」 体を起こして窓を指さす。  窓が開きカーテンがふわりと揺れる。 その向こうに、超絶イケメンの死神が見えている。 ニッコリと微笑み、今にも消えそうな俺の命の蝋燭を掌に乗せ差し出している。    
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