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これから先、例えばゆい以外の人と知り合って結婚して子供が出来てと考えてみてもピンとこなかった。
ゆいがいないこの世界はどうでもいいものに思えた。
助手席をふっとみると、人が乗っていた。
えっ?えええええ???????
急ブレーキを踏んだ。
走り出した後にどうやって乗り込んだ?え?最初から乗ってた?いや確かに助手席には3本包丁を置いてて、さっきまで目の端でそれをちらちら見てた、見えてた、ってことは誰も居なかった!絶対に!後部座席に?後部座席にいたの?隠れてたの?なんで何のために?
後部座席から前に来るときは大変だよ、絶対気づくよ、こうさ、ばさあってなってさ、おいやめろよとかいうレベルだよ?俺何も気づかなかったよ?
大混乱で隣を凝視していると、
「急ブレーキは危ないですよ、ここ山道なんですから、谷に落っこちちゃいますよ、因みに後部座席から移動してません」
超絶イケメンがニッコリ笑う。
俺もイケメンイケメンいわれているけど、所詮長身を生かして雰囲気でむりくり持って行ってるだけなので、正統派イケメンにはコンプレックスがある・・・じゃなくて、
「誰ですか?なんですか?」
「あ、失礼しました。私死神です」
・・・そっか、イケメンなのに”あいたたたた”の人だった。残念。
「いえ、何処も痛くないですよ」
超絶イケメンが俺の思考を読んだ?
そういえばさっき後部座席の事言ってた。
まさかね・・・
「ええ、そのまさかです」
また読まれた!なんでだ!
「だから死神だからですよ」
「ま、いいか、どうせ、だ、変な人と最後に交流してもいいよね」
独り言を言うと、
「だから私は変な人ではなくて、死神なんです」
面倒くさい
ので
わかった
ことにする
一言一言頭の中で区切る
「こと、じゃなく、分かってくださいいい~まずは信頼関係」
なんでだ!これから魂を刈る相手と信頼関係結んでどうなるってんだ!
「その後がスムーズに運ぶんですよ」
ここまで言われるとちょっと信じてしまう。
「そう、それでOKです」
死神は零れるような笑顔を見せた。
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