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最後の1分で駆け込んで来られましたよ。
死神が指差す方を見ると、1人の男が横たわった体の手を握り
「頑張れ、頑張れ」と言っている。
「あれ、誰ですか?」
死神に聞いてみる。
「知りたいですか?」
「まあ、はい…」
「では、目を閉じてゆっくり思い出してみましょう!吸って〜吐いて〜繰り返して〜」
吸って吐いてって…呼吸じゃん。
ピ…コ…ン…ピ…コン…ピコンピコンピコン
意識が本体に戻っていく。
握られた右手が痛い。
馬鹿力がっ!
「い…た…い…っ………て!」
聞こえないだろうに目の前の男が顔をあげた。泣いてグズグズの顔はさっきまで超絶イケメンを見ていたので何ともかんともだけど、
「思い出しましたか?」
死神の声に驚いて声をあげた。
「うわ、まだいた」
その瞬間また体の外に出てしまった。
「そんな人をお化けみたいに…」
これにはどう答えたものかと思案していると
「まあ、お化けっちゃお化けですもんね」と
1人で解決していた
「思い出しました…この世で唯一気を許した男です」
「大正解です!!」
死神はにっこりと微笑むと、手にしている火の灯った蝋燭を2本、ぐいっと目の前に差し出して見せた。
熱く無いのかな。
「熱くないです」
声に出してないのに通じた!と思ったら
「何を今更、ずっと声は出してないですよ」と笑う。
そうか、本体はベッドに横たわったままだ。
同じ長さに見えるけれど1本は継いであった。
この部分はこっちの蝋燭から折って継ぎ足しました。そう言って片方の蝋燭を近づけて見せてくれた。
そしてこれはあの人の蝋燭です。死神が男を見た。
1本を半分に折る時にあの人が願ったんです。
「半分より少しだけ短くあいつにやってください」って。
あなたの方が少し短くなっています。何故だかわかりますか?
私の返事を待たずに死神は続けた。
「あいつは人とうまくやっていけないし、何より寂しがりやだから。俺が少しだけ長生きしてあいつを見送ってやらないといけないんです。その為に少しだけ俺のを長くしてください」
「そう仰ってましたよ」
今ならまだあなたに継いだこの蝋燭元に戻せますがどうしますか?と尋ねてくる。
横たわった体の手を握り
「俺を置いて行くな」と必死で叫ぶ男を見ていると胸の真ん中がポッと暖かくなる。
「どうしてこの人のこと忘れてたんだろう」そう呟くと
「どうしてでしょうね」と隣に立つ死神も呟いた。
世の中答えの無い事の方が案外多いのかもしれませんよ。
「またいつかお会いしましょう」
死神が立ち去る様子を見せた。
「あ、」と声をかけると
「何ですか?」と振り向いた
「その時もイケメンのままで来てね」
死神は爆笑して
「わかりました、ではまた」
死神とまた会う約束をしてしまった。
ふふっと笑ったら本体の顔も笑ったようで
男が大騒ぎを始める、笑った笑いました!
そんなナースコールある?とまた頬がピクピクした。
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