贈り物(元犬)

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再び俊介サイド  引っ越しの翌朝、陽二より少し早く起きていた俺は庭からクゥ~ンと甘えた声を聞いた。  陽二もその声を聞いたのだろう、自室のドアをバーンと開けると、全裸のまま庭に飛び出した。 「しろだ!しろだ!俊、これしろだよ!しろが帰ってきてくれた」  俺を振り向いたり、しろに抱きつき泣いたり、話しかけたり大変な騒ぎだった。 「もう~何処に行ってたんだよ、兄ちゃん、めっちゃ探したんだよ」 しろをもみくちゃにしながら喜びを爆発させていた。しろは汚れた感じも、飢えてる感じも無くゆったりと尻尾を振っている。貫禄からするとしろの方がお兄さんだった。  それにしても感動的で、微笑ましい光景だった。陽二が全裸な事を差し引いても。  陽二がやっと自分が全裸だと気が付いた。今更感半端ないのに、それでも前を押さえ、ぴゅーっと自室へ走り去ったのを、爆笑で見送った。  しろが庭でのんびりしているのを見ていると、 「さっきは失礼しました」と消え入りそうな声で恥ずかしそうに陽二が再登場した。コーヒーを渡しながら 「お着換え上手に出来たね」 というと苦笑いを浮かべていた。 「しろが帰って来たから俺は用済みかな?」 陽二が慌てるのを承知でそう聞いたのは、ほんの少し、しろに嫉妬したから。  「そんな事、無い無い!絶対に無い!」 案の定大慌てで一生懸命になってる。 その余りの必死さは面食らう程で、ごめんごめんと意地悪かった事を謝った。 「では2人と1匹で仲良く暮らしますか?」 俺が尋ねると陽二は、嬉しそうに顔いっぱいの笑顔になって頷いた。  真夜中、2人が眠った頃、二人と一匹が暮らす家の庭の生垣がガサガサ揺れた。 お爺さんとお婆さんに挟まれた超絶イケメンがいた。 「こんな展開で良かったでしょうか?この世で一番相性のいい人が近くにいて良かったです。女性でなかったのがあれですが・・・」  超絶イケメンが老夫婦2人に交互に顔を向けながらお伺いを立てている。 「上等、じょうとう、あの子が幸せなら相手が男性でも女性でも構やしないよ、死神さんありがとうね~」 2人に拝まれてしまった。  手違いで1日早くあの世に連れて行ってしまったお詫びに何でも望みを叶えますと言われ、お爺さんはまずお婆さんと会いたいと言った。 そして1人残された孫の寂しさをどうか、無くしてやって欲しいと願ったのだった。  今は家の中にいるしろが起き上がり、窓辺に近寄ると庭に向かい尻尾を振った。 「あ、しろさん、しろさんもご協力ありがとうございました」 「しろ、陽二を頼むな」 死神が手を振る。お爺さんとお婆さんも手を振る。しろも尻尾を振り返す。  しろは3人が消えるまで見送った。  陽二と俊介のこの出会いが、贈り物である事をしろだけが知っている。
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