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「さあ、出来上がったよ」
親父の肩に手を置き、鏡越しに言うと、親父は鏡を覗き込んだ。
「良し、いい男だ、母さんにお前がやってくれたって自慢するよ」
うんうんと頷くだけの僕の頭を小さな子供にするように撫でながら、ありがとう、元気でなと何度も何度も言い、思い切った様に
「よし、もう行くわ」
そう言うと、ドアを開けてくれと言う。
自分では開けられないそうだ。
「行くって、どうやって」
僕が尋ねると、親父が顔を向けた。
店の前の道路の向こう側、明らかに川の上だろうあたりに人が立っていた。
真夜中なのに、少し離れているのに、その人が、どえらいイケメンだと分かる。
「あの人に連れて来てもらった、そしてこれから連れて逝って貰えるんだそうだ」
道路を渡る父の背中に声をかける
「父さん!!」
振り向いた父は、頑張れよと言ってくれた。
「うん、うん、頑張るから、安心して!」
「それから、あの、あなた、」
イケメンさんに声をかける。
「父をよろしくお願いします!」
イケメンさんは、にっこりと笑うと頷いた。
最後に親父がこちらに手を振って、暗闇に向かい二人が消えていった。
ふいにスマホが鳴った。病院からだった。
それから、ポツリ、ポツリと夜のお客さんがやってくるようになった。
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