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「いかがですか?」
鏡に映った自分を見て
「ばあさんに、見せたいくらい男前に出来とる」
晴れやかな笑顔を見せてくれる。
「そういや、ばあさん、なんやら可愛い色の髪しとったが、よっちゃんがやってくれたんだろ?」ここにくる前に家にも寄って来たという。
頷いてみせると
「ばあさんに良く似合ってた、ありがとうね」
そして言いにくそうにして
「よっちゃん、時々でいいから、うちのばあさん気にしてやってくれる?」
佐藤さんは残して行く奥さんが心配なのだ。
「時々なんて、そんな水臭い」
僕の返事に安心した佐藤さんは
「ありがとうね、安心していけるよ。あ、お代は例の箱から取ってね」
そう言って立ち上がった。
「はい、今までご愛顧ありがとうございました」
感謝を伝えてドアを開けると、佐藤さんが、一人ですたすたと歩きだした。
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