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次のニュースです(粗忽長屋)
目が覚めて、ベッドの中で伸びをした。久しぶりにゆっくりと眠った。ベッドにうつ伏せになったまま、テレビの電源を入れると、お昼のニュースが映し出された。
昼まで寝てしまった。何に対してか分からない、若干の後ろめたさを感じつつ、リモコンを持ったまま、画面を見るとはなしに眺める。
アナウンサーが何の抑揚もない、声音で、
「なお、被害者は、〇〇市に住む、加賀谷良平さん、32歳。死因は特定されてませんが、仰向けに倒れており、警察は事件事故両方から捜査しています。では次のニュースです」
驚いて、ベッドの上で、思わず正座してしまった。
同姓同名同年齢だ。加えて住んでる市も同じ。
同じ名字にすらあまり会った事ないのに……。
どんな奴だったんだろうと思う。こいつの人生は、幸せだったんだろうか。誰か心配してくれる奴はいるんだろうか。
コーヒーをセットしながらも、色々考える。
亡くなって、ニュースで読まれても、あっという間に次のニュース。情報は押し流され、人々の記憶にも残らない。虚しいな。
なんて、偉そうにいっても、自分だってそうだ。それが悲しい話題だろうが、楽しい話題だろうが、興味がなければ、次のニュースに行く前にチャンネルをかえたり、電源オフしたりしてた。
ピピッとドリップが終わった音がして、結局はコーヒーに気を取られ、その上、一口飲んで、ああ、うまいと思ってしまう。
その時、エントランスからのチャイムが鳴った。
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