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「うん、うん、そうだよね、そうそう」
一人で納得して、頷いている。
「この人には悪いけど、あなたでなくて良かった。本当に良かった」
そう言って、あのミニタオルで目を抑えた。
震える肩をそっと抱くと、胸の中にするりと入って来た。
抱きしめながら思い返す。そうだった、千夏はいつも、いつだって、俺の事を心配してた。自分がどう思われても構わない、あなたが楽になるんならって、それだけを言っていた。
あの時も、私が負担なら、消えなくちゃねと泣いていた。
「やり直してくれる?」
意を決して聞いてみると、胸の中で、うんうんと頷く。
イケメン、すみませんね、俺モテモテで。しかも霊安室で。
「お引き取りいただけますか?」
イケメン警察官が口を開いた。
てっきり、帰れと言っているのかと思ったら、遺体を持って帰れという事だった。
「なんで?」
付き添いのはずの俺が、千夏より先に聞いてしまった。
その途端、電気が消え、真っ暗になる。
加賀谷さん、加賀谷良平さん、
名前を呼ばれ目を開けると、さっきのイケメン警官に覗き込まれていた。
俺は、横になってるのか。
背中がひんやりとしていて、顔の部分だけジッパーが下ろされているのが分かった。
イケメンが爽やかな笑顔で浮いている。浮いている?!
「あなたは、あなたを引き取りにいらっしゃったんですよ」
そう言ってケタケタと気味悪く笑った。
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