32人が本棚に入れています
本棚に追加
/79ページ
1つだけ生き返る方法があります。
その言葉に、俺は飛びついた。
「やる、やる、何でもやります、その方法教えてくれ、下さい」
「今からあの時に戻って、上司の裏をかくんです」
死神がニコニコと笑う。
あの時に戻って?出来るわけないよ、時間を遡って、って、そんなタイムトラベルなんて出来っこないよ。がっくりと項垂れると、
「私、一応、死神なんで」
胸を張って見せた。
「出来るの?」
「はい、ただし条件があります」
俺はその条件を飲んだ。
さっきまで降っていた雨で濡れた道を素知らぬ顔で歩く。
あいつが後ろをついて来ているのが分かった。
この場所だ、街灯の切れ目、人通りもない、道には大量の落ち葉。
背後に忍び寄る、あいつの気配。今です!頭に直接指示が飛んできた。
「わっ!」
声を出しながら、振り向くと、あいつはバランスを崩し、そのまま仰向けにすっころんだ。
その時聞いた音は、気持ちのいい物じゃ無かった。
同じことやり返しただけなのに、やっぱり気が塞ぐ。
死神の条件は、命の交換。
頭の中に声がした。
「お疲れ様でした。成功です。では、時間軸を元に戻しますね。あの人が勝手すっころんだ正しい時間軸へ。またいつの日かお会いしましょう」
またいつの日かって、もう人生最後の日にしか会いたくないんだけど。
そう思って、ちょっと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!