次のニュースです(粗忽長屋)

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 1つだけ生き返る方法があります。 その言葉に、俺は飛びついた。 「やる、やる、何でもやります、その方法教えてくれ、下さい」 「今からあの時に戻って、上司の裏をかくんです」 死神がニコニコと笑う。  あの時に戻って?出来るわけないよ、時間を遡って、って、そんなタイムトラベルなんて出来っこないよ。がっくりと項垂れると、 「私、一応、死神なんで」 胸を張って見せた。 「出来るの?」 「はい、ただし条件があります」 俺はその条件を飲んだ。  さっきまで降っていた雨で濡れた道を素知らぬ顔で歩く。  あいつが後ろをついて来ているのが分かった。  この場所だ、街灯の切れ目、人通りもない、道には大量の落ち葉。  背後に忍び寄る、あいつの気配。今です!頭に直接指示が飛んできた。 「わっ!」 声を出しながら、振り向くと、あいつはバランスを崩し、そのまま仰向けにすっころんだ。  その時聞いた音は、気持ちのいい物じゃ無かった。 同じことやり返しただけなのに、やっぱり気が塞ぐ。 死神の条件は、命の交換。     頭の中に声がした。 「お疲れ様でした。成功です。では、時間軸を元に戻しますね。あの人が勝手すっころんだ正しい時間軸へ。またいつの日かお会いしましょう」   またいつの日かって、もう人生最後の日にしか会いたくないんだけど。 そう思って、ちょっと笑った。
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