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ガンバレダイスキー(居残り佐平治)
店の外で言い争う声がした。飲み屋街ではよくある事。
いつもなら放っておいても、喧騒に紛れて、やがて聞こえなくなる。
だけど、今日のは、店の前から一向に動く気配がない。なんなら、どんどんエスカレートしてるくらいだ。
待てど暮らせど客の来ない店内、カウンターの内側に引き入れた椅子に座り、だらだらとスマホを見ていた大は、頭を上げ、声のする方に注意を向けた。
オジサンと若者、大きな声を出すのは専らオジサンで、若者の声は、合間、合間に、少し聞こえる程。
ただでさえ、閑古鳥が鳴いてるのに、店の真ん前でやられちゃ客が入って来れない。
まあ、喧嘩がなくても客は入ってこないだろうけど。そう思うが、万一って事もあるからなと思い直す。
なんにせよ面倒くせぇなあ、そう呟き立ち上がると、戸を開け、顔だけ覗かせた。
「あの~」
呼びかけた大の声は、喚くオジサンの声で搔き消えた。
今度は少し大きな声で呼びかけた。
「あの~、」
言い争ってる二人がこちらをびっくりしたような顔で振り向いた。
「すいません、うちの店の前で騒ぐのやめてもらえます?よそで、やってもらえませんかね」
大が言い終わると、若者がオジサンに向かって
「もう、わかりましたから、離してください」
と言うと、自分の腕を捉えていたオジサンの手を振り払った。
それはとても軽くあしらったように見えたのに、振り払われたオジサンが、こちらに、ぶっ飛んできた。
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