32人が本棚に入れています
本棚に追加
伝票を片手にポケットに手を突っ込み、首を捻る。
体中を両手でバタバタ叩き、ポケットと言うポケットに手を突っ込み、大を見て、またバタバタと叩くを繰り返し、最後に泣きそうな顔で大を見た。
「財布が、ない・・・・・・」
見られたって困る。
「さっき、騒いでる間に、落ちちゃったのかも」
慌てて外に飛び出して、路地を探すがあるはずもない。
誰かが拾ってくれて、交番に届けてあるかもと言い出す。
「じゃあ、行ってみてください」
大が言うと、信じられない物を見る目でみられた。
「えええ?良いの?このまま一人で行かせていいの?帰って来なかったら?丸損だよ?無銭飲食だよ?経営大丈夫?」
心配そうに言い募る顔を見て、どの口で言ってるのか、なに目線なのかと、呆れを通り越して苦笑いしてしまう。
「じゃあ、一緒に行きます」
そう言うと、今度は、
「ええ?他にお客さん来たら、どうすんの?せっかくの儲けを、みすみす逃すかもよ?」
ときた。
「あああああ!うるさい!とっとと行って来い!そして絶対帰って来い!」
堪らず叫ぶと、
「ご、ごめん、分かった、これ、これ担保に置いていくから」
須藤は腕時計を外すとカウンターに置き、跳び出していった。
どうせ大したことない時計だろうと手に取った。
ブランドものなんか良く知らない。刻まれたアルファベットを拾いながらスマホで調べる。
「んひゅっ」変な声が出る程の高価な時計だった。
最初のコメントを投稿しよう!